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vol.1 上坂典子さん その4

Oi-pan interview パン好きの「なんでパン?」をうかがいます。

●上坂典子(うえさかのりこ)さんのプロフィール
石川県小松市生まれ。成城大学文芸学部国文科卒業後、
北陸放送(株)にアナウンサーとして入社。
1998年、北陸放送(株)退社後フリーとなる。
現在、北陸放送やえふえむ・エヌ・ワンなど、
石川県内のラジオの仕事を中心に、
式典・イベントの司会、ナレーターとして活動中。
2000年、2008年と、パリへの「パン旅」経験あり。

その4

パンは生き物、という感覚

―    今行ってみたいパン屋さんはありますか?

上坂・・・東京の「ペリカン」(※創業60年の老舗店。食パンとロールパンのみのパン屋さん)さん。シンプルだけど、圧倒的に支持されてる食パンってどんなのかなって。作り込んだものより、食パンやハード系のカンパーニュで「ここはおいしい」というお店に行ってみたい。私はパンに関しては保守的なのかもしれないですね。きちっとベースができてるものが好き。

:lol: このインタビューの後、oi-panは「ペリカン」さんから
食パンをお取り寄せしてみました!その感想はこちら


―    近頃のパン屋さんの中には、素材から、製法から、とにかく作り込みすぎてるパン屋さんありますよね。すごくスノップな雰囲気の店内に、ものすごく高価なパンが並んでだりして。

上坂・・・そういう点では、私が行ったパリのパン屋って、そんなんじゃなかったです。前に言ったみたいに、昔の日本の対面販売の八百屋的で。「本当に素材のいいもの売ってるよ」という雰囲気がある。そこが魅力だったのかなと。市場行くとワクワクするのと同じで、焼きたてのものがいっぱいあって。作るところも結構見えて、イキイキしてる。
それと比較すると、日本のパン屋さんって、ちょっと幼いように感じます。パリには、トレイ持ってお客がパンを選んでる店、なかったですもん。かつて「ラ・フィセル」(※前記事をご覧ください)では、そんな対面販売スタイルでしたよね。

パリの市場

市場のパン屋さん1

市場のパン屋さん2

 

―    東京の「ヴィロン」や「ルヴァン」も対面販売スタイルですよね。でもちょっと面倒じゃないですか? いい年した大人が、パンを取ってもらうというのが。お店のスタッフはだいたい若い女の子だし。なんだか気恥ずかしくて。スタッフがもうちょっと年配の方だったらいいのかな?

上坂・・・でも日本でも、肉屋さんはまだ対面販売が多いでしょう? このお肉を何グラムって。パンもお肉と同じように「生き物」と思えば、自分で取るより、取ってもらうほうが自然。パリの人は「パンは生きてる」って思ってるからじゃないかな。バケットは生鮮食品と一緒で、絶対その日のうちに食べるという感覚。そんなふうに見ると、なんか日本のパン屋さんがが子どもっぽく思えて。

―    ということは、日本のパン屋さんはまだまだ成熟する余地がある。

上坂・・・あるんじゃないかと思います。

―    上坂さんはいろいろなパン屋さんを見すぎちゃったから、県内のパン屋さんがもの足りない、というのはあるかも。

上坂・・・パンの嗜好は人それぞれだから、日本のパン屋さんについてどうこう批評するつもりは毛頭ないけど、私のパンの好みから言うと、「パリのパンを食べちゃったら…」というのは、もしかしたらあるかもしれません。だから、日本だったら玄米に行くという。

―    このまま、心は玄米に行っちゃって、パンからは離れていきそうですか?

上坂・・・確かに「噛めば噛むほどおいしい玄米」に惹かれていますが、ほんとにおいしいパンを食べたら戻ってしまうかも。でも、別に気取って「本格的なパンじゃないとパンじゃないわよね」なんていう気はさらさらなくて…ハード系ばかり食べてたら、コンビニのB級パンが食べたくなる時もあります。なにせ最初が「やわらか菓子パン」から始まってるから。みんなやっぱり、大衆的な味って大好きですよね。それがあるからこそ、本格的なパンなおいしさも際立つんじゃないかな。私も、時にはコテコテのあまーいパンが食べたくなります。そんなパンを全然否定してないです。
今パンに少し冷めてるのは、おいしいお米が食べられる環境に満足しているだけ。パンが嫌いになったわけじゃないです。

―    そんな上坂さんが、パンから思いつく言葉は何ですか?

上坂・・・これは簡単です。「しあわせ」です。やっぱり焼きたてのパンの匂いって、しあわせの匂いだと思います。それは、思えば実家のお向かいにあったパン屋さんの匂いのような気もするんです。ほっとする匂い。おいしい味を思い浮かべて、子どもの頃に嗅いでいた匂い。しあわせのイメージは、やっぱり幼児体験に結びついてると思うんです。お店にいっぱい並んでるパンを見ると、買わなくてもワクワクしてた。近所で顔見知りだから、たまにおまけもらえたりとか。

―    まだあるんですか?そのパン屋さん。

上坂・・・移転したので、家の向かいに店舗はないです。「あづまや※」さんというパン屋さんでしたね。昔は小松にパン屋さんというと、ここしかなかったです。学校給食にも卸してたし。みんなのパン屋さんでした。
※現在も、駅前に移転して「あづまや ラ・ネージュ」というお名前で営業されてます。

―    そこから、「ルヴァン」や「ラ・フィセル」へと、つながっていくんですね。ふわふわのパン屋さんの時代から、ハード系パンへと。日本のパン屋さんの過渡期とちゃんとリンクしてますよね。
いずれまた、パリにも行かれるんですか?

上坂・・・たぶん、きっと。

―    上坂さんの中では、パンの理想形というとフランスのパンなんですか?

上坂・・・うん、やっぱり、そうですね。

(上坂さんのインタビューはこれで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうごさいました。
次回のゲストは、麹料理研究家の小紺有花さんです)