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vol.2 小紺有花さん(麹料理研究家) その1

Oi-pan interview パン好きの「なんでパン?」をうかかがいます。

小紺有花 (ここんゆか) さんのプロフィール
大阪生まれ。大阪、インド、奈良育ち。石川県金沢市在住。2児の母。
2006年より京都の豆屋「楽天堂」の会報誌にて、
料理エッセー「麹遊び」を4年間連載。
そのエッセー連載を期に、麹料理の本格的な研究を始める。
現在は不定期で石川県を中心に、「麹料理教室」や「麹パーティー」などを開催。
麹を再び日本の食卓に呼び戻すため、商品開発なども手がけている。
趣味は剣道。

 

粋な木綿の着物姿で和の伝統食、甘酒を使った料理を発信する小紺さん。
そんな彼女にも、意外や意外!パンに夢中になった時期がありました。
今日のような「自分に合った食スタイル」を見つけるまで、
さまざまな試行錯誤を繰り返したという小紺さん。
インドのパン、肉や魚を排除したマクロビ料理や天然酵母の手作りパン、
そして玄米、甘酒料理にいたるまで、
まっすぐで真摯な「食探究の旅」をご紹介します。



その1

懐かしのインド「ブレッド」

―    一番はじめのパンとの出合い、覚えてます?

小紺 ・・・祖母の家、でしたね。焼いてない食パンに、マーガリンと真っ赤なイチゴジャムをサンドして食べてるのが、最初の記憶です。当時はまだバターは高価だったから「大人はバター塗っていいけど、子どもはマーガリンね」と言われてました。そのパンからはみ出るジャムをペロペロなめてましたねぇ。保育所の土曜の給食が必ずジャムパンだったのも、うれしかったです。自分の家でもいつしか毎日、朝食はパンになってました。

―    では、もの心ついた時から、朝食はパンだったんですね。

小紺・・・そう。ずっとパンで育ってきているので、パンへの欲求は常にどこかにあるような気がします。

―    子どもの頃の朝食では、どんなふうにパンを食べてたんですか?

小紺・・・パンとミルクティー。たまにチーズのせて焼いたり、玉子焼きをつけたり。

―    パンは食パン?

小紺・・・大手パンメーカーのごくふつうの食パンです。近所の商店街に、パンとお菓子を売ってるよろず屋みたいなお店があったので、そこでスライスしてもらって、買ってきてましたね。

―    そしてそのまま、ごく普通の日本人のパンライフが続くと思いきや…

小紺・・・そう、インドに行ったんです! そこで毎朝食べてたのは、10センチ角・1センチ厚さのパン。日本のサンドイッチ用みたいな。

―    そのパンの名前は?

小紺・・・え~っと、ブレッド(笑)。

―    そのまんまじゃないですか(笑)! それを必ず食べてたんですか?

小紺・・・必ずです! カリカリに焼いたブレッド2枚に、好みでスクランブル、ボイル、フライの卵料理を添えて、イングリッシュスタイルでいただくんです。ボイルはちゃんとスタンドにのっかってましたねぇ。

―    本格的! もしかして、メイドさんがいたりとか…

小紺・・・そうなんです。メイドさんが2人いました。父が駐在員だったので、つけてもらえたんですよね。

―    じゃあ、メイドさんに用意してもらった朝食を毎日。

小紺・・・ええ、ブレッドと卵料理とフルーツ、チャイが毎朝のメニューでしたね。

―    そのブレッドはおいしかったんですか?

小紺・・・いえ、たいして(笑)。カリカリしてて、ふわふわしてないし。日本で食べてたパンはふわふわ~っとスポンジみたいだったから「パンはふわふわが当たり前」と思ってたので。
そうそう、ある日、仕事関係の人が「日本のパンを持ってきた」と、1斤だけ持ってきてくれたんです。
そのパンのおいしかったこと!!! 「日本のパンだ~」と感動しましたね。
4年のインド生活で、たった1回だけのことでしたけど。

―    海外に行ってる日本人が、ご飯を恋しがるという話はよく聞きますけどね。それがパンだったとは(笑)。

小紺・・・よく「ご飯の炊ける匂いが…」「ご飯のつぶつぶが…」とか懐かしがる人が多いんですが、私はインディカ米も好きだったんです。

―    あ、インドでもご飯は食べてたんですね。

小紺・・・だから今、日本でインディカ米が出てくると、すごい感激します。

―    小紺さんがインドにいた5~10才って、味覚が植えつけられる時期ですよね。

小紺・・・そうなんです。私はインドでも”食のカルチャーショック”がなかった。兄たちは相当あったみたいです。特に3才上の兄は多感な時期に入ってたので、すごくショックだったみたい。

―    幼かった小紺さんは、ブレッドやインディカ米をごく自然に受け入れてたんですね~

小紺・・・ブレッドには後日談があるんですよ。学生の時にインドに旅行した時、食事に例のブレッドが出てきた! 
「これだ~」と(笑)。その再会の喜びといったらなかったですね。


―    朝食に出てきたんですか?

小紺・・・朝食にも出てきたし、ランチにも。また、そのブレッドは焼いてもないんです。一緒に食べた友人はみんな「まずい、まずい」と…。私一人だけが「おいしいなあ」と思って食べてました(笑)。
粉の精製度が悪くて、雑味があるんだけど、それがむしろ味わいになってて。
今の状況はよくわからないですが、当時のインドの食事には、添加物はほとんど使われてなかったと思います。まだそこまで進んでなかったというか… 家畜を育てるにしても、飼料が今でいうオーガニックなんですよね。卵にも色がつく飼料を使ってないので、薄い黄色だった。肉もすごくおいしかったし。豚のスペアリブなんて、脂身が甘くて、めちゃめちゃおいしいかったですよ。今でも母と「インドの肉はおいしかったよね」と言ってます。

―    自然な環境で、化学飼料を使わず育てると、やっぱりおいしくなるんですね、小麦も卵も肉も(笑)。
ブレッドの味わいが記憶に残っていたのも、「粉そのもののおいしさ」を身体が覚えていたのかも。

小紺・・・ あ、なるほど。そうかもしれないですね。

 

(つぎに続きます!)