sitemap

vol.3 今井喜久子さん(料理研究家) その1

Oi-pan interview パン好きの「なんでパン?」をうかがいます。

●今井喜久子(いまいきくこ)さんのプロフィール
石川県七尾市出身。金沢市在住。3児の母。
「ホームメイド協会」などでパン・ケーキほかの基礎・理論を学ぶ。
1995年より自宅で「手作り工房グーテンアペティート」主宰。
翌年、出張型料理教室「いどばたキッチン」を主宰。
現在、金沢・七尾・自宅の3ケ所に教室を持つ。
各種イベントでのライブクッキングやガスレンジの講習会のほか、
2011年春からは、石川の元気な野菜と農家を応援する
「じわもんライフ」プロジェクトのスタッフとして活動中。


つきぬけた明るさと、軽快なおしゃべり、
ツボをおさえたワンポイントアドバイスで大人気の今井先生。
「適当でいいのよ」「大丈夫、味はおいしいから」
そんな言葉に励まされてか、教室やイベントは
いつもおおらかな空気に包まれています。
でも、できあがるパンや料理は抜群のおいしさ!
それは、ほんわかムードの先生の中に、
ふとーい○○の柱が貫いているからなのです。
このインタビューを読んで、○○を考えてみてくださいね。




その1

おしゃべりパン教室

―    ではまず、先生と料理のなれそめからお聞きしますね。最初に料理教室に通われたんですよね。それはどうして?

今井・・・えーっとね、どうしてだったかな。結婚して子供がまだ小さい頃だったから…そうそう、当時はバブルの最盛期だったんです。”カルチャー”という言葉がすごく流行ってて、主婦が何かを習いに行くということが流行してたんですよね。”一般家庭で料理を教える”という教室がたくさん出てきた頃。

―    ああ”おうちで習う教室”ですね。今でも結構ありますよね。

今井・・・今よりもっとたくさんあったのよ! そして私が一番最初に習ったのが、澤田文代さんという先生。現在の「招龍亭」の女将さんです。その方のところに、パンやケーキ・料理を習いに行きました。澤田先生のような自宅開放型、サロンタイプの教室に興味があって、そしてさらに「ホームメイド協会」へも通うようになりました。

―    澤田さんの教室は、お宅で開催されてたんですか?

今井・・・そう。すごく人気がある教室で、当時は200名ぐらい生徒さんがいたんじゃないかしら。月1回の料理サロンだったんだけど、なかなか予約がとれなくて。

―    やっぱり、料理がお好きで通いはじめたんですよね?

今井・・・ケーキやパンを作るのは好きでした。でも、家事での食事作りは特に(笑)。「主婦は毎日しっかり作らなきゃいけない」という義務感ばっかりでした。

―    主婦になって年数も浅く、慣れない台所仕事って感じ?

今井・・・嫌いじゃなかったけど、それより近所の奥さん方とのおしゃべりのほうが好きだったの。料理教室には通っていたものの、家では友達を呼んでその料理をふるまったりして、朝から晩まで家事もかえりみず、井戸端会議してました(笑)。今も同じだけど・・・

―    それじゃ本末転倒だ(笑)。でも、ホームメイド協会にはどうして通うようになったんですか?

今井・・・新聞広告か何かで見たのかなぁ。当時、料理の資格が取れる教室はここしかなかったような気がする。月2回通って、まずパンの資格を取りました。さらに、もっとどんどん資格を取っていきたいからと、名古屋の教室にも行きましたよ。
私、検査技師の経験からか、料理やパンの作り方を理屈っぽく分析してしまうの。だから自分で言うのもなんだけど、理解がとても早かったんです。でも、やはり人に教えるには資格が必要とわかって、早く取得してしまいたくなって。自分の自信にもなるし、対外的に実力を裏付けることもできるから。

―    まずパンを教える資格を取って…

今井・・・パンでホームメイド認定講師の資格を手はじめに、料理、パスタ、チョコレート、和菓子と次々に取得していきました。

―    そんなにいろいろ種類があるんですか 8-O

今井・・・あるだけ持ってればいいかなぁと思って(笑)。

―    確かに(笑)。では、教室を開くようになったのは?

今井・・・習ってきたパンやケーキを焼いては、近所の奥さん、幼稚園ママをお呼びして、よくお茶をしてたのね。そんな人たちの中から「教えてほしい」という人が出てきて。それならば、と教室を開くことにしたんです。

―    その頃、料理教室には、まだ通っていたんですか?

今井・・・ええ、もちろん、両方の教室に通いながら、はじめました。つい最近まで、20年近く通ってました。教室を開くようになったのは、澤田先生への母、女性として憧れの気持ちもあったかもしれませんね。妻・母としてしっかり家事を切り盛りして、自分の好きなことをサイドビジネスにする」というスタイルにね。

―    主婦が憧れる生き方のひとつですよね。澤田先生のようなロールモデルがあると、目標が定まりやすかったと思います。そうやって先生はまず一歩踏み出したんですね。その16年の道のりを振り返っていただくと…

今井・・・今の場所に自宅を新築して、キッチンでパン教室をはじめました。当時60名ぐらい生徒さんがいたかしら。1日4名の教室を、週に4日開催してましたね。月1~2回の教室で、ホームメイド協会のパン認定講師の中級クラスまで取得できる内容でした。

―    自宅で60名! これだけの生徒さんを、いったいどうやって集めたんですか?

今井・・・全部口コミです。近所の奥さん、子どもの幼稚園のお母さんとか、ほとんどが知り合い関係だったの。

―    みんな「パンを習いたい!」という時代だったんですかね。

今井・・・何かやりたい」と思ってる人が多かったわね。それから、子どもを連れて来られるのも魅力だったと思う。一時期は保育士さんを雇ってたこともありましたよ。

―    へぇ、すごい!

今井・・・ここでお母さんたちは作ったパンを食べて、幼稚園へお迎えにいくという流れができてました。

―    習って、おしゃべりで発散もできて…子育てママには、ちょうどいいですね。

今井・・・気をつけたのは、お持ち帰りを付けること。次の朝のパンになるよう、たくさん持ち帰れるようにと考えましたね。試食程度の持ち帰りだと、結局はカバンの中でつぶれて捨ててしまう、なんてことをよく聞いてましたから。
あとお嫁さんとお姑さんが来てた家族も多かったですよ。午前中はお嫁さん、午後はお姑さん。その時間、それぞれ言い合って、気持ちを発散して、そしてお金はお姑さんが払うんだから。面白いでしょ(笑)

―    へぇー、嫁姑の両方がストレス発散にきてたんだ :roll:

今井・・・教室は習う4分の1、おしゃべり4分の3の“おしゃべりクラブ”みたいなものよね。子ども、嫁姑の悩みやら、情報交換の場ですね。

―    情報交換しながら、たくさんのパンも持ち帰れて、主婦には最高の教室ですよね。忙しい主婦は時にはラクしたいもんね。
先生はそうやって教えながら、パンを極めていったと。



 

 

 

 

 

 


今井・・・
極めたかどうかはわからないけれど、“パン作りで失敗しない”とは常に言っています。知識としては身につけたと思ってる。でも、私はパンや料理を極めることより、料理教室での生徒さんとのコミュニケーションのほうが、より大切で好きなんですよ。たとえば、調理器具のイベントの料理教室だと、みなさん「何か買わされるのでは?」と警戒心を持って来られるわけ。だけど、「パンの生地は、子どもをなだめるようにさわってくださいね~」とか「酵母のオナラがパンをふくらませるんですよ」とか楽しく解説しながら作っていると、みんなの表情がだんだんとほどけてくる。パンが焼けておいしい香りが教室じゅうに漂うころには、ニコニコと実にいい表情になってる。
その快感といったらないんです! それがあるから今までこうしてやってるのかもしれない。だって、パンは9割は失敗なくできるの。だから簡単といえば、簡単。家庭で食べる程度のごくフツーの出来のパンならね…

― なるほど、先生はもはやその境地なんですね 。


(つぎに続きます!)