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vol.3 大石旭さん その3

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

●大石旭(おおいしあさひ)さんのプロフィール
兵庫県神戸市生まれ。金沢大学文学部行動科学科中退。
電気工事会社勤務を経て、
金沢市有松の「アリスファームキッチン」でパン作りを学ぶ。
2004
年、白山市鶴来エリアに「あさひ屋ベーカリー」開業。
趣味は山歩き。

 

 

その3

“ここだけのパン”ができるまで

―    オープン当初、宣伝とかはしたんですか?

大石・・・一応、チラシを配布しました。でも最初はね、あんまりおいしいパンが作れなくて…お客さんもあんまり来てくれなかったんですよ。

―    えーっ!うそ~ :roll:

大石・・・ほんとに。ダメかなと思うぐらい。

―    パン屋さんでの修業経験もあって、今こんなにおいしいのに?

大石・・・修業といっても、アリスさんではレシピをもとにそのまま作ればいいだけやったから。

―    開店当初は、アリスさんのレシピを踏襲してたんですか?

大石・・・だいたいそうですね。まだ応用力がなくて。それがまた、そのまま僕が作っても、おいしくなかったんですよ。

―    自分で食べてみても、わかったんですか?

大石・・・ええ。それで「おいしいパンを作るにはどうしたらいいんやろ」と悩んで、独学でいろいろと研究しはじめました。

―    結構かかりました?その研究期間。

大石・・・3年ぐらいかかりましたね。3年めに、天然酵母を配合するようになってから、変わってきました。

―    天然酵母を使うようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

大石・・・研究しはじめて2年めぐらいに、東京にパン屋めぐりに行っていろいろ食べ比べしてる頃、「メゾン カイザー」※のパンを食べたんです。「これはおいしいなぁ!」と感動しましたね。あそこは天然酵母のルヴァンリキッドを使って、パンを焼いてるんですよ。それからですね、ルヴァンリキッドの作り方を調べて、うちのパンにも使うようになっていったんです。

メゾン カイザー

伝統製法にこだわるフランスの名店。エリック・カイザー氏が考案したライ麦から作るルヴァンリキッド(液体酵母)で有名。日本店はあんパンで知られる「木村屋總本店」の息子さんが手掛ける。クロワッサン、バゲットに定評あり


―    作り方、どこで調べたんですか?

大石・・・「メゾン カイザー」関連の本で調べました。あと、ナンシー・シルバートンというアメリカの有名なパン職人の本も参考になりましたね。それも液体の天然酵母を使ってます。

―    液体の天然酵母の使い方とは?

大石・・・種起こしして、それを生地に植えつけて発酵させるのが通常の天然酵母の使い方。液体酵母は起こして、そのまま使います。

―    うーん、すみません。パン作りしろうとの私には、せっかく説明していただいても、ついていけなくて :oops: … でも、どこかでルヴァンリキッドの扱いは、難しいと聞いたような。

大石・・・そうですか、僕は扱いやすいと思うんですけどね。酸味があって、うまみがよく出ます。あんまり酸っぱいと、おいしくないけど。

―    天然酵母はその加減が難しいんですよね。あえて使ってるお店はすごいなぁと思います。

大石・・・僕にとっては、天然酵母もイーストも材料のひとつで、パンの仕上がりに、より適したものを使い分けてるだけなんです。イーストは、よくふくらんで軽い感じに仕上げたいパンに。クロワッサンも持ち上げるのに力がいるので、イーストも使った仕上がりが好きです。天然酵母は、重くてどっしりしたハード系のパンに使います。あと、いろんな粉を配合する時とか。

これは、グリーンレーズンから起こしている天然酵母。 酵母は、パンにうまみや香りを出す「だし」というのが大石さんの考え方

 

 

 

 

 

 

 

 

パンに使うヨーグルトも自家製。とことん「発酵好き」の大石さんです

 

 

 

 

 

 

 


そうやって、天然酵母を取り入れた“自分のパン”をつかんでから、お客さんの反応は変わりはじめましたか?

大石・・・なんとなく、お客さんが増えてきたかなぁというのはありました。

―    その時「天然酵母を使いはじめました」とかPRしたんですか?

大石・・・いえ、特には。ポップに書いたぐらいかなぁ。

―    じゃあ、きっと口コミで増えてきたんですね。お客さんって、仕事に対して、ダイレクトに反応してくれるんですか? たとえば「やっぱり天然酵母は違う!」とか。

大石・・・う~ん、それはどうかなぁ。食べて「おいしい」に尽きるんじゃないかな。

―    私、鶴来エリアって、地元のおじさんおばさん、家族連れがメインの客層で、天然酵母やハード系パンって、まだまだなじまないんじゃないか、と勝手に思ってたんですが…

大石・・・いや、そうでもないですよ。バケットを一度に2本買って、バリバリ食べてるおっちゃんとかいますし。別に「チーズやワインとお洒落に」とか、「天然酵母じゃなければ」とか、スタイルや頭から入ってもらう必要はないんです。「このパン、おいしいなぁ」と思って食べてもらえば十分。どんな酵母を使おうが、僕の中だけのことで、お客さんに無理に知ってもらう必要もないし。

―    なるほどねぇ。今までお客さんの反応で、心に残ったことは?

大石・・・一番うれしい言葉は「ここのパン食べたら、ほかのパン食べれんわ!」ですね。

―    それ、うれしいですよね! シンプルだけど。そういうフレーズが聞けるようになってきたのは、3年めあたり、自分のレシピが出来てからですかね。

大石・・・そうですね。「アリスさんと同じものを作っていたのではダメ。ここまでわざわざ買いに来てくれるには、ここだけのパンを作らないと」と気づけたのはよかったです。でも今も勉強中ですよ。まだ、うまく作れないパンもあるし。クロワッサンとかは、まだまだ納得できてない。

―    ”あさひ屋のクロワッサン”が目指す理想形があるんですね。

大石・・・うん、皮がパリパリっとくずれて、天然酵母の香りがふわっと香って…。そして、中の生地が口のなかでとろけるような。

―    うわ~おいしそ。そのクロワッサンは完成目前ですか?

大石・・・今年じゅうには。

―    ええっ、ほんとに! できたらお知らせください。楽しみにしてます♪ それから、天然酵母のほかにも、あさひ屋さんには「地元産の素材をふんだんに使ってる」というイメージもあるんですけど。

大石・・・もちろん、いいものであれば使いますよ。でも、地元産ならなんでも、というわけではないです。五郎島金時とか、金沢市のつつじが丘にあるリンゴ園のリンゴとかは使ってますね。特にリンゴ、おいしいんです、味が濃くて。以前、つつじが丘近くに住んでいて、自転車で散策してた時に偶然見つけたんですよ。タルトとか、蒸しパンに使ったりしてますね。ほかには、地元の白山市の「六星生産組合」さんのキュウリ、トマト、レタス、玉ネギを使って、サントイッチとかラスク作ったりとか。

―    確か、粉はすべて国産小麦を使ってるんですよね。5種の小麦を使い分けてると。

大石・・・国産小麦はなかなか安定しないので、これから続けていけるかどうか…でも使えるうちは使っていきたいですね。

 

(つぎに続きます!)