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vol.4 塩井増秧さん その3

Oi-pan interview パン好きの「なんでパン?」をうかがいます。

●塩井増秧 (しおいますお) さんのプロフィール
大分県出身。金沢市在住。
1989年に渡欧し、日本語教師・翻訳をしながら、アイルランドに3年半在住。
1998年、金沢市新竪町に「アンティーク フェルメール」開業。
毎年春秋には、アンティークの買い付けのため、
イギリスに約3週間ずつ滞在している。
2005年、金沢市のリトルプレス「そらあるき」を仲間とともに創刊。
編集長を務める。



その3

金沢にほぼ20年・・・

―    最近は、イギリスにもお洒落なパン屋さんとか増えてきましたか?

塩井・・・うーん。それはよくわかんない。デリカテッセンとかはよくあるし、行くけどね。おいしいバケットとかも置いてあるし。でも、一般のイギリス人はそんなにパン、パンっていうこだわりはなさそう。すっごくこだわってるやつは自分で焼いてると思う。日本人って、ちょっと変わってるよ。イタリアン、フレンチとか山のようにあるじゃん。

―    日本人の食に対する考え方って、やっぱり変わってるんですかね。

塩井・・・変わってると思うよ。金沢だけで見てみても、そうじゃない。「食のまち」って言われてるわりには、庶民が行くような安くておいしい店って、少ないような気がする。1000~1500円で「今日はこの店来て、よかったな」という思いをさせてくれる店、あんまりないもん。まだ東京の高円寺とかだったら、800円ぐらいで真面目に作っているお店あるよ。高級食材使ってるわけじゃないけど、幸せな気持ちになれるような。まぁ、金沢は人口も少ないから、しょうがないのかもしれない。店に幅がなくて、なんか偏ってる。確かに、高いお店はおいしいけどね。

―    石川県でも地方に行けば、あると思うけど。金沢は特殊なのかもしれないですね。

塩井・・・“金沢”って構えているところがあるんじゃないかな。「これはこうせんなん」とか。もっと普通でいいのに。僕も金沢に来て20年近くになるから”金沢人気質”ってなんとなくわかるけど…ある一定以上の年齢になると、価値観が凝り固まってくるよね。特におっさん。「これはこんなもんだ」という。自分の頭で考えてない。いや、若い人は違うけどね。

―    そう言いつつも、塩井さん、そんな金沢に19年もいるし(笑)。 やっぱり、どこか合うところが…

塩井・・・それ、よく言われる! やっぱ生活環境がいいよね。自然とか、町のサイズとか、文化とか。結構いろいろ言ってきたけど、金沢の人は基本的に真面目だし、別に嫌いなわけじゃないよ。

―    やっぱり、今「フェルメール」がある“新竪町”の居心地がいいのかな。

 

アンティーク フェルメール
新竪町商店街

 















塩井・・・
うん、ここはいいですよ。だら~っとした感じがいいね(笑)。適度に抜けた感じが。新竪だからいられる。新竪はほかの商店街とは全然違うし。金沢はどうも苦手だけど。

―   「金沢苦手」ってホントかなぁ :roll: 塩井さんが編集する『そらあるき』には、金沢への愛着が詰まってる感じがするけど。もう7年も、かかわってるじゃないですか?

 

そらあるき


塩井・・・
まぁ確かに。それに、この雑誌やるようになってから、金沢の知り合いが圧倒的に増えたね。先入観で苦手意識のあった人でも、よくよく知ってみると「そうでもないな」とかあったりして。そんなふうにして、知り合いも増えたし、僕のことを知ってる人も増えたね。たぶん僕、顔広いんじゃないかな?

―    もちろん(笑)、そうですよ、有名人ですよ!

塩井・・・あ、そうかな(笑)。でも、よく取材とかもあって、そこで「町のために役立ってると思いますか?」ってこれがまたよく聞かれるの! そんな時「ない」って、答えるようにしてる。

―    え? 役に立ってると思うけど。

塩井・・・観光客が「そらあるき」持って、町を歩いているのをよく見かけるし、「役に立ってるのかなぁ」と思う時もある。でも、そういうのは、あんまり考えないようにしてる。でないと、自分の感覚がずれてくるような気がして。もっとエゴイスティックにやっていきたい。

―    ここまで続けてこれた理由は?

塩井・・・意地、かな。僕、ほんとはもう取材とかしたくないんですよ。対外的な仕事や調整作業に専念したいんだよね。それだけでも結構時間取られて、消耗するし。すっごい考えなきゃいけないんですよ。記事の統一性も保っていきたいしね。人気が出てきた分、みんなの期待値も上がったし。

―    金沢の顔のひとつになってますもんね。21世紀美術館とともに。

塩井・・・全国的な注目度が上がってきた今、僕が、とても注意してるのは、書き手のメンバーのこと。金銭的にはあんまりメリットないんですよね。時間もとられるし。だからメンバーにとって「あ、あれをやってるんだ、いいね!」というぐらいのメリットを与える雑誌でありたいということなんです。「ああ、やっていてよかった」と思ってもらえるように。

―    それはあると思う。「そらあるきのMAPに載せてもらって、すごくうれしかった」と喜んでる店主さんもいましたよ。

塩井・・・ありがたいことなんだけど、そんなイメージなんて、あっという間に壊れるからね(笑)。
クオリティを保ちつつも、もっといい雑誌にしていかないと。

―    え、これ以上あと、どこ上げるんです? ページもほどよいし。中身?

塩井・・・ページはもうこのままで。文章とか、いろいろ…。ここまできたらね。

―    これからやってみたいこと、やる予定のことってあるんですか?

塩井・・・ない(笑)。強いて言えば「読者を裏切らない」ことかな。正直、ここまで認めてもらえる雑誌になるとは思ってなかったの。だから、もう少しよくしないともったいないかなと。
いずれやめるんだし。

―    方向性は具体的に見えないけど、動いていくなかで見つけて行こうと。

塩井・・・そりゃ、そんなことないよ~。僕の中にある程度はありますよ。

―    やっぱりあるんだ! でも、ナイショなのね。

塩井・・・言葉ではうまく言えないけど、ある程度のイメージは描いてる。でないと、みんなを引っ張っていけないよ。極端に何かが変わるわけじゃないけど、せっかくならレベルを上げて、「金沢にはこういう雑誌がある」と言われるようになりたい。
僕が言うのもなんだけど、いわゆるリトルプレス※、僕はこの括りはあんまり好きじゃないけど、その中では代表的なひとつになっちゃってると思う。盛岡の「てくり」とかと並んでね。
この先、雑誌として特色性を出していくには、クオリティとともに意外性を盛り込んでいきたいと思ってる。
見る人は見てますからね。今、支持してくれてる編集関係の人が買わなくなったら”終わり”と思ってます。

※リトルプレス
企画・制作・販売まで、大手出版社を介さずに、
個人あるいは数名のスタッフで行っているミニコミ誌。
既存にない自由な編集・デザインスタイルに魅力がある

―    雑誌って、ある日突然、クオリティが落ちますからね。そうならないように、これからもすごい緊張感で続けていくわけですね。

塩井・・・正直、結構キツイんだけど、もう少し自分の思ってる方向でねばったら、何かを超えられるような気がする。そうすると、やってる人たちも楽しいし、「やっててよかったね」となると思う。あとは、僕がどこまで冷静でいられるか、だけですね。「人の役に立ってる」とはあんまり考えないようにしながらね。

 

(つぎに続きます!)