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vol.5 岡崎俊裕さん その4

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

●岡崎俊裕(おかざきとしひろ)さんのプロフィール
1970
年、奈良県生まれ。金沢大学教育学部・金沢大学大学院哲学科卒業。
地元、奈良県で小学校教員を6年間勤めた後、退職。
パン職人を志し、金沢を起点に修業を開始する。
石川県河北郡「ボングー」、長野県「ル・コパン」、
「金沢全日空ホテル」(現ANAクラウンプラザホテル金沢)の製菓・パン部門、
恵比寿「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」など、
約10年の経験を積み、2010年に独立。

 

その4

新しいことを始めるなら、金沢

―    そうやっていろんな学びを経て、いよいよ独立となるわけですが、「自分のお店はこんなふうにしたい」というイメージはあったんですか?

岡崎・・・「シンプルですっきりとしたお店」というイメージは、ずっと持ってました。ごちゃごちゃしてるのは嫌いなんで。といっても木目はあまり好きじゃなかったので、白と黒のベーシックな色でまとめて、パンが見やすいようにしたかったですね。

―    私は、白と黒のこのスタイリッシュな雰囲気が「YAMANEKO」という店名に象徴されてる気がするんですが。確か、ルキノ・ヴィスコンティ(※イタリア映画の巨匠)の映画「山猫」から取ったんですよね。この映画やヴィスコンティは以前からお好きだったんですか?

岡崎・・・いえ、全然(笑)。実は名前をつけてくれたのは、僕が金沢大学にいた時から仲良くしてるフランスの社会学の先生なんです。その方に6、7年前から「パン屋を開業する時には、何かフランス語の小粋な名前を付けてください」とお願いしてたんですよ。そしたら先生が東北大学の大学院に内地留学してた時、宮沢賢治に触発されたらしく「『注文の多い料理店』から取って、山猫はどうだ」と。
正直「うーん」と思いましたね(笑)。

―    あ、物語に出てくる料理店の名前「西洋料理店 山猫軒」でしたもんね。

岡崎・・・でも、その後に、ヴィスコンティの映画『山猫』を見たら、冒頭に変わらないでいるためには、変わり続けなければならない」というセリフがあったんです。
その言葉に感ずるものがあって、「あ、山猫というのもいいな、この名前にしよう」となったわけです。

―    ちょっと変わったいきさつですね(笑)。
にもかかわらず、お店の雰囲気とぴたっと合ってるのが面白いなぁ…。
あ、そうそう、ここでちょっと、いつもパン屋さんにする質問をしますね。
岡崎さんは、もともとパンはお好きだったんですか?

岡崎・・・ええ、好きは好きでしたよ。母がパン好きだったんで、小さい頃からよく食べてました。

―    これもなぜかいつも聞いてしまうんですが、ご飯と比べるとどちらが好きですか?

岡崎・・・それ言われると…なんですが、ご飯のほうが好きですね。

―    なのに、パンで身を立てようと思ったのはどうしてですか?

岡崎・・・僕はね、基本的に「職業との出合いは偶然」と思ってるんです。教師やめた時は「ものづくり」がしたかった。で、いろいろと考えた末、「それなら、生活に根差したパン屋になろう」と、ふと思いついたんです。

―    奈良で教師をされてたのに、金沢に戻ってくることは決めてたんですか?

岡崎・・・「新しいことをはじめるなら、金沢」と決めてました。金沢が好きだったんで。奈良よりずっと刺激的ですし。

―    奈良もすごくいいところとだと思いますが…

岡崎・・・関西の中では、一番は大阪なんです。奈良には確かに歴史はありますが、今の新しい文化はなかなか発展していかない。特に僕の住んでた南部のほうはね。それに比べて、金沢は食もファッションも面白い。やっぱり、その地方の中心都市がいいですね。たまたま大学に受かって、奈良からここ金沢に来たんですけど。その後、暮らした6年間の鮮烈な印象がずっと残ってましたからね。あと、奈良には海がないし。ここだったら、海と山、両方の自然が楽しめますしね。

―    じゃ、休日は海や山に出かけたり…

岡崎・・・それが…今はもう、パン三昧の日々ですね。休日は身体を休めることに専念してます。読書したり、テレビでスポーツ観戦したり。そうやってるうちに、あっという間に休日が終わってしまいます。その間にも、パンのことが頭から離れないですし。

―    オープン1年めですもんね。現在、開店時の起床、就寝時間は?

岡崎・・・朝3時半に起きて、寝るのは11時ぐらいです。起床時間は、パン屋としてはそんなに早くないほうだと思いますよ。早いお店だと、2時半ぐらいから始めてらっしゃるんじゃないですかね。

―    いや~、十分早いですよ。でも、一人でやってると、病気にもかかれないですね。

岡崎・・・そうなんです、そこは大変ですね。僕は大丈夫でしたけど、奥さんはしんどい時期がありましたね。「僕もレジおぼえないと」と思ってたこともありました。でも、接客があんまり得意じゃないんでね(笑)。

―    そうですか? きっといい感じにこなされると思いますけど。

岡崎・・・接客が得意じゃないというのもありますが、それをやりながらだと、パンの作業がおろそかになるのが、いやなんですよね。

―    じゃあ、これから厨房に人を入れることも考えてますか?

岡崎・・・悩ましいとこですね。なるべく一人でやりたい。今は人を増やして量産するより、「いろんなものを作りたい」という気持ちがすごく強いんです。作ってないものがまだまだある。キッシュ、スコーン、チャパタとか…。
クロワッサン・ダマンド(クロワッサンにアーモンドクリームをトッピングしたパン)もすごく好きなパンのひとつです。クロワッサンをただ加工した二次商品のように思われがちですが、ロブションで学んだのはお菓子のような完成度で、予想を超えるおいしさです。でも、今うちのパンの種類が50ぐらいになってしまってるので、増やす余裕がなくなってきてるんです。
バケットでも、まだやってみたいものがありますしね…

―    バゲットはすでに2種類ありますよね。そのほかにもまだあるんですねぇ。
それは、どんなバケットなんですか?

岡崎・・・すごくおいしい!でも、製法もすごく変わってるバケットです。めちゃくちゃ手間暇がかかるので、スタッフを入れないと実際にやるのは難しいですね。

―    うわ~ミステリアスなバケット! それはじゃあ、今後の楽しみということで。
これから作りたいパンを語る岡崎さんは、めっちゃ楽しそうですね :lol:

現在は通常タイプのバゲット(左)と
低温長時間発酵のYAMANEKOバゲットの2種











(つぎに続きます!)