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vol.6 吉田勝人さん その4

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

●吉田勝人(よしたまさと)さんのプロフィール
1974
年、小松市生まれ。石川工業高等専門学校建築学科卒業。
大阪の建築会社、金沢の店舗設計会社で設計に携わる。
26
才の時、小松大和の「ドンク」で働き、パンの魅力に目覚める。
加賀市のかぼちゃ村のベーカリー「ア・ポワン」勤務後、独立。
小松市北浅井に「ヨシタベーカリー」を開業。
2008
年に小松市矢崎町に移転、現店舗をオープン。
趣味はパン作りと日曜大工。

 

その4

自分がおいしいと感じるパンを

―    今、吉田さんが作っているパンは結構ハード系が多くなってきてますよね。
バケット、ベーグル、天然酵母のパンなどが主力ラインナップなんでしょうか。

吉田・・・天然酵母はレーズン、ライ麦、全粒粉の3種類からおこしたものを使い分けてます。レーズンはバケット系に、ライ麦のものはライ麦パンに、全粒粉はハチミツのパンに、というふうに。

―    “ヨシタベーカリーらしさ”を出したパンをあげていただくと、どのパンになりますか?

吉田・・・バケット、ライ麦パン、ハチミツのパンですかね。

―    まず、天然酵母のバケットって珍しいですよね。香りをよくするためですか?

吉田・・・僕が天然酵母に魅かれている理由は“香りと旨み”です。一口食べた時に、いろんな複雑な風味が徐々に口の中に広がっていく。その感じにどっぷりとハマってしまって…。天然酵母を使うと、粉そのものの味を楽しむという感じは薄れますが、酵母が作り出す味わいになってきます。


前日に仕込んで低温長時間発酵で作るバゲット

 

 

 

 

―    バゲット好きな方は「粉の風味が」とよく言いますよね。それがヨシタベーカリーのバケットでは“酵母が醸す味わい”を重視していると。それはもう、吉田さんの好みで。

吉田・・・ええ、完全に僕の好みですね。酸味、深み、雑味など、いろんなものを含めた味わいあるバゲットです。

―    そうしたオリジナルなパンを考案する時って、どういうプロセスがあるんですか?

吉田・・・いろいろなパターンがありますが、例えばパン屋さんを食べ歩いて、おいしかったパンをヒントにしたりとか。
ライ麦パンはそうしたパンのひとつです。これは大阪の「シュクレクール」というお店のライ麦パンがモデルになってます。始めて食べた時にもう惚れ込んで、「自分の店でライ麦パンを出すなら、これだ!」と。

―    このパン、よくライ麦パンにある酸味がほとんどないですよね。

吉田・・・ライ麦の粉自体にそれほど酸味があるわけではないので、発酵の段階で雑菌が入らないようにするなどの工夫である程度、酸味をおさえることはできるんです。

―    酸味をおさえながら、粉の旨みを引き出して発酵させてるんですね。

吉田・・・ええ、そうです。

―    このパンは生地もみっしりと詰まっていて、食べ応えありますよねぇ。さらにおいしくなる食べ方って、ありますか?

吉田・・・スライスして、しっかりした味の具材と食べるのがおすすめですね。
チーズや肉のパテ、トマト料理とか。

―    ハチミツのパンも独特の味わいですよね。

吉田・・・ハード系でありながら、食べやすいものを考えました。

―    そうですよね。生地がむっちりしてます。

吉田・・・ハチミツのパンを始めたのは、「これ東京で買ったパンなんやけど、初めての食感で、どうやって作ってるかさっぱりわからん」と、お客さんからいただいたパンがきっかけになりました。僕も食べたことがない食感で「あ、こんなパン作ってみたいなぁ」と作り出したんです。

―    確かにむっちりしていても、ベーグルとはまた違った食感ですよね。固くもなく、ほのかに甘くて、不思議な満足感のある :-o

吉田・・・そうなんですよね。ナッツと合わせて何種か作ってみました。

―    この3種のほかにも、力を入れているパンはありますか?

吉田・・・ベーグルにも力を入れてますよ。

―    ベーグルもすごくおいしいですよね。どのあたりにこだわってるんですか?

吉田・・・こだわりというよりも、僕がおいしいと思うベーグルを作っています。ただ、僕は今までそれほどベーグルを食べてきたわけでもないので、「これぞ、ベーグル」といったものがわからないままやっているんですけどね。アメリカに行けばわかるのかなぁ。
でもアメリカのベーグルと、僕らがおいしいと思うベーグルはまたちょっと違うのかなと。
僕の中では、自分の作るベーグルを「おいしい」と感じるので、「これでいいかな」と思ってますね。

―    ベーグルって、またお店ごとに全然違った味わいがあって、面白いですよね。その食べ比べも楽しみのひとつです :-D

吉田・・・ベーグルは、わりと淡泊な味のものが多いんです。砂糖と塩の味がほのかにするというタイプが一般的だと思います。でも僕はあえてしっかりとした味のベーグルを作りたかった。ですから、天然酵母を使って、生地自体に深い味わいがあり、ベーグルらしい食感も楽しめるものを目指してます。


レーズンの天然酵母を使って、低温発酵で作るベーグル。
表面はバリバリとして、中はむぎゅっとした食感が特徴

 

 

 

 

 

―    ヨシタさんのベーグルは、生地もずっしりしてるのに、具材もしっかり入っていて、すごく満足感があるベーグルなんですよ。小さな3つのパンを一緒に食べたぐらいの。そんなパンもこのお店の魅力かなとも思うのですが。

吉田・・・それは考えてます。”ひとつでも満足できるパンを”とは常に思ってますね。

―    お店では新しい商品を続々と出される方ですか?

吉田・・・いえ、そんなに出ないです。定番のパンが中心です。時々季節のものが出るか、たまたまふっと思いついたものがあった時ぐらいですかね。

―    では試行錯誤して、きっちり完成したパンしか出してないと。

吉田・・・そういうわけでもなくて、発想がわいた時にはわりあいポンと出たりします。
「新商品を出さなければ」という思考を「今あるパンをよりおいしく」という方向に持っていってるんです。前の店では「常に新しい商品を出していかないと、お客さんに飽きられる」という考えに振り回されて、結構プレッシャーになっていたので。

―    今のお店では、そういうプレッシャーからは解放されたんですね。

吉田・・・はい。まだ新商品に行くゆとりがない、というのもあるかもしれませんが、でも僕の中では「今出しているパンをよりいいものにしていきたい」という気持ちが強いです。


(つぎに続きます!)