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vol.7 寺田 匡さん その5

Oi-pan interview パン好きの「なんでパン?」をうかがいます。

寺田 匡(てらだ ただす)さんのプロフィール
富山県小矢部市出身・金沢市在住。
専修大学法学部法律学科卒業後、
商社、コーヒー会社勤務を経て、金沢製粉株式会社に入社。
2002年、代表取締役社長に就任、現在に至る。
趣味はパン・スイーツ作り、映画鑑賞




その5

小麦の国内自給を

―    今後、金沢製粉さんでは何か新しい展開を考えておられますか?

寺田・・・波動小麦粉のように“付加価値を付けた商品”を開発できれば、と思います。当社では創業時から原料の品質の高さにこだわりカナダ産のウェスタンレッドスプリング(1WC)という世界で一番評価の高いパン用粉を、どのパン用粉にも半分以上使用しています。価格が高騰しても、一貫してこの粉を使い続けてきました。それがお客さまの信頼を得ている一因だと自負しています。そうした品質面のベースはすでに確立しているんですが、今後はそれとは違ったまた別の方面でも何か展開できないかと。



社内には、小麦の品質を確認する試験室もある

 

 

 



―    品質の上にさらにということですか?

寺田・・・ええ、今まず頭に浮かぶのは国内産小麦のことです。現在の国内産小麦の総生産量は約90万トン。国内需要の約15%です。生産エリアは偏っていて、北陸3県ではほぼ生産されていません。
私は、自分たちのエリアで食べる分の小麦の何割かは自分たちで作ろうという流れにならないと、おかしいと思うんですよね。

―    金沢製粉さんでも国内産小麦は扱っておられるんですか?

寺田・・・昔から扱ってますよ。国内産小麦は年間約1300トン挽いてます。22年産は、北海道産約800トン、愛知産200トン、埼玉200トン、滋賀100トンです。これらはほとんど麺用の原料です。









製粉所では、左の小麦粉は最終的に右端の細かさにまで粉砕される。
挽いた粉の約3割がパン用の粉となる


―    国内産小麦が少ない上にパン用小麦となると、さらに量が少ないんですね。
聞くところによると国内産小麦に占めるパン用粉の割合は約1%とか…。
これだけ輸入小麦が高値になってきても、
国内の小麦需要に応える国内産小麦を作ろうという動きはないんですか?

寺田・・・もちろん、ありますよ。前出のお話のように、国際穀物相場に左右されるような原料を使っているからパンが高騰するのであって、国内で自給自足できれば国内需要に応じた価格でやっていけますからね。

―    そうなるといいなと本当に思います。
でも、国内の小麦は品質が安定しないとか、その年で収穫量も変動が大きいとかをよく聞くんですが。

寺田・・・最近、北海道春小麦などは、品質のいいものがどんどんできてきていますよ。
確かに気候による変動は大きいですが、品種改良などの工夫で改善していけるのではと思います。
各県が実状をしっかり把握し、需要をまかなえるような品種開発をして、
自給自足の方向に向かうのが本来一番いいことなんですから。

―    日本じゅうどこでも小麦は作れるんですか?

寺田・・・作れますよ。九州でも冬小麦を作ってます。ただ冬小麦は10月に種をまいたら、収穫は翌年の7月頃。約10ケ月かかるんです。春小麦だと、雪解けにまいて8月末の収穫ですから、5ケ月ぐらいで収穫できます。それができるのは北海道だけです。でも期間がかかっても、耕作放棄地を残しておくぐらいなら利用して栽培すればいいじゃないですか。
「地元で食べる分の小麦は地元で作る」ぐらいのことをしなければ、日本の食糧自給率は上がりませんよ。

―    パン需要がこれだけ多いんですから、米と並ぶ主食として考え方を変えていってもいいのでは :roll: とも思います。

寺田・・・少しずつ考え方は変わってきているとは思いますが、まだまだですね。
現在、農林水産省が米の転換作物として推奨しているのは、大麦と大豆。北陸三県では大麦の国内生産の約3割を供給しているんです。ただ、大麦を作っていても、なかなかメディアには取り上げられない。大麦は焼酎、押麦、麦茶の原料などになるんですが、ほとんど知られていません。

―    石川県の小松市では広い麦畑を見ますが、確かにあまり知られていないですね。てっきり小麦畑だと思ってました…

寺井・・・そうでしょう。そんな状況の中、昨年から小松市でユキチカラの小麦に取り組み始めたんです。2010年は約20トン、2011年は約40トンとれました。

―    取り組みは注目されているんですか?

寺井・・・小松の地域おこしとして始まった「小松うどん」とタイアップして、どんどんメディアに登場するようになりました。小麦の場合は大麦と違って、みなさんの関心事になりやすい。そういうことを生産者は敏感に感じ取っているんです。「あ、自分たちが作った小麦がこんな注目されている」と。
それが今後の励みになっていくんですね。
そうした生産者に対するインセンティブも含めて、小麦に切り替えられる部分は切り替えられるよう、目に見える動きになっていったらと思います。

―    小松産のユキチカラはパン用の粉なんですか?

寺田・・・基本的には準強力用の原料です。うどん、ラーメン、パンと、汎用性の高い、非常に面白いパン粉です。

―    そういえば、小松のパン屋さんで小松小麦で焼いたパンを見かけたことがあります。

寺田・・・そんな形で少しずつ浸透していけばいいですね。今、JA小松さんが非常にがんばって作っておられます。その収穫量をどんどん増やしていただいて、小松産のパン用小麦が成長していったらいいなと思っているんです。そうなれば、当社でも県内産小麦をひとつの柱にしていきたいです。

―    県産小麦、大歓迎です :lol: 小松小麦、これからも応援していきたいです!
最後に、製粉以外の分野への展開などは今後お考えですか?

寺田・・・これまで製粉業だけできましたので、何か新しいことをやれないか、とは思っています。実はパン屋さんもそのひとつなんですよ。でも、うちのお客さんはパン屋さんですからね…そういうところでいつもジレンマに陥ってしまうんです。
個人的な思いとしては、名古屋の喫茶店文化にみられるような、おいしいコーヒーとパンをリーズナブルに提供して、お客さまが気軽にゆっくりと楽しめる店ができたらいいなとは思っています。
コーヒー業にも携わりましたので、コーヒーにも一過言ありますし。

―    金沢は自宅でのコーヒー需要は多いそうですが、喫茶店は意外に少ないですよね。

寺田・・・私たちの世代がゆっくりくつろげるお店が、以前はありましたが今はなくなってしまいました。

―    社長さんにやっていただいたら、うれしいです。金沢製粉さんの粉を使っておられるパン屋さんのパンを、日替わりで出したりして…

寺田・・・いいかもしれませんね。自家焙煎のコーヒーと一緒に提供してね。僕の手作りパンの日があってもいいかもしれません。

―    あ、いいですね :-o

寺田・・・それが昔からの大きな夢のひとつです。大人の憩いの場は減ってきてますのでね。

―    喫茶店が社長さんの昔からの夢だったとは…おいしいコーヒーが飲める大人のパン喫茶いいですね。そういう店を待ち望んでいる人、きっと多いと思います。
今日はいろいろと珍しいお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。


(寺田社長さんのインタビューはこれで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうごさいました)