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vol.7 ゲイトウ・アンデルスさん その4

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

●ゲイトウ・アンデルスさんのプロフィール
1976
年、フランス・パリ近郊に生まれる。
15
才でコロンビアへ。ベルギー人のピザ店でパン作りを覚える。
フランスへ帰国し、パンの学校で学ぶ。
「PAUL」などパリの数々のパン店で修業の後、コスタリカへ。
パンの行商をするうちに、直美さんと出会う。
イギリス・ロンドンに渡り、

ホテルや高級デリのベーカリー部門に勤務。
再びパリに戻り、パティシエの資格取得。
フリーのパン職人として働き、直美さんと結婚。
第1子誕生を機に直美さんの
故郷、粟津温泉に移住。
2008
年6月に現店舗をオープン。


 

その4

パリで夢見た小さなブーランジェリ

―    日本に来る時点で、今のようなお店を持つことは考えていましたか?

アンデルス・・もちろんです。その決意で来日しました。今でも覚えてますよ。5年前、直美と当時住んでた小さな家のベランダで「君の好きな粟津温泉で、君の好きな人たちに囲まれて、ちっちゃな店が出来たらいいね」と語りあったことを。

―    ふたりの姿、目に浮かぶようです :oops: とってもロマンチックですね。それで家族で来日されて、直美さんの地元である粟津温泉へ。すぐに小松のベーカリー「ビロン」さんに入られたんですよね。

アンデルス・・ビロンさんで約半年働いて、次に製菓工場で約1年働きました。その間に店舗物件が決まり、工場の勤務終了後や休日に直美と少しずつ手作りで店の内装を進めていったんです。

―    念願のお店を自分たちの手で作り始めたんですね :-D

アンデルス・・旧店舗だったスペースを、壁の塗装や天井の和紙貼りなど、できる部分はなるべくお金をかけず、半年ぐらいかけて二人でやっていきました。

―    そして2008年6月にオープン。最初は大変だったそうですが。


南仏を思わせる爽やかな雰囲気の店内。
内装は今も二人で少しずつマイナーチェンジを加えている

 

 

 

 

アンデルス・・まさか、オープン時にあれだけたくさんの人が押し寄せるとは思いませんでした。準備不足で毎日が目が回るほど大変でしたね。開店後しばらくはほとんど寝てない状態。私と直美が順番に倒れてしまったこともありました。2人めの子どもが生まれて、まだ3ケ月めでしたからね。

―    それは大変だったと思います。日本はオープン時の賑わいが、とにかくすごいですからね。
特に「粟津温泉の中心部にパン屋さんが開業。それもフランス人のオーナーさん!」と聞けば、みんなこぞって行きたくなりますもん :-o 今は3年めになって、すっかり地元に浸透しましたよね。厨房スタッフも2人と、とても安定した体制になってますね。

アンデルス・・厨房にスタッフが入ったのはとてもよかった。彼らから、ここでどんなパンが好まれているのかを教えてもらえましたし。今の日本のベーカリースタイルを知ることができました。それに迎合するつもりはないのですが、”知っておく”というのは大事なことです。
私はこの店が、
「フランス人が作るフランスパンの店」というふうに固定されてしまうと面白くないなと思っています。今まで学んできたヨーロッパのパンも紹介していきたいですし、日本で生活するうちに出てきたアイディアも提案していきたいですから。

―    周辺に住んでいるのは、フランスパンになじみのない年配の方が多いですしね。

アンデルス・・そういった方々にはソフトなパンをきっかけにして、そのほかのパンも試してもらえるような店づくりをしていきたいです。ハード系の需要は日本でもどんどんこれから増えていくとは思いますが、まだまだ知らない人が多いでしょう?

―    私はハード系ばっかりなんで、よくわからないんですが :-?

アンデルス・・お好きな方にはもちろん楽しんでほしいんですが、私たちはまだ知らない人にこそ、その味や食べ方をどんどん提案していきたいと思っています。その一環として、子どもたちの食育にも関わっていきたい。現在も幼稚園や小学校に呼んでいただくと、どんどんパンのことを話に行ってますよ。
お店では毎年、子どもたちのために「バケット教室」も開催しています。バケットを舌や匂い、質感など、五感で感じ取ってほしいんです。そして、いつかどこかでバケットを食べた時、「あ、ちっちゃい頃、フランス人のおじさんと生地をこねたなぁ、あの時の味や香りはこんなふうだったな」と思い出してくれるといいですねぇ。


―    フランスの本物の味を伝えられるのって、アンデルスさんみたいな方じゃないとなかなかできないことですよね。

アンデルス・・いや、「本場」「本物」なんて上から言うつもりは全然ないんです。そんな大げさなものじゃなくて、フランス人がふつうに食べているものをみなさんに伝えたいだけなんですよ。フランス人が生活の中で食べているものって、ごくごくシンプルなものです。素朴で、ごまかしや余分なものがない。
そうした生活に根差したもので、自分で自信を持って提供できるパンだけを作っていきたいですね。

―    フランスの食というと”リッチ”というイメージがありますが、ふだんの生活はそういう感じなんですね。

アンデルス・・私は庶民派フランス人の代表格。そんな私が日本人のみなさんに、どんなふうにパンを提案していけばいいのか、日々考えて、チャレンジしています。
実はとても注目しているお客様の層は、先ほども言ったような子どもたちと、昔の素朴な味を覚えている高齢世代なんです。子ども、お年寄り、彼らは正直な感想を伝えてくれますしね。

―    今、わかりやすい形で提案していることはありますか?

アンデルス・・ベースとして打ち出しているのは、フランス人としてのアイデンティティを語るものとしての「バケット」。そこは絶対に失いたくないところです。伝統的製法で作るバケットを、もっとより多くの人に知ってほしい。そのほかに、日本人の生活にうまく溶け込ませられるような形を今模索しています。ベースがありながら、「こんなパンならもっと喜んでもらえるんじゃないかな」と、いろんなパンを創作するのが今の喜びでもあり、楽しみにもなってます。


 

 

 

 


 

 

 



まだまだ日本ではなじみのないフランスのパンの提案や、
日本海の幸を使ったハンバーガー、和菓子風パンなど、楽しい創作パンも数多い



(つぎに続きます!)