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vol.8 浦辺千寿さん その2

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

浦辺千寿さんのプロフィール
1985
年、石川県七尾市に生まれる。
県立羽咋高校卒業後、和倉温泉の旅館「加賀屋」に入社し、
接待さんとして働く。
その後、レディスカジュアル会社「ハニーズ」に勤務。
2009
年に実家に戻り、家業の農業に従事する。
2011
年にパン・焼き菓子の工房「ネテ製穀」を開業。
七尾市の雑貨店「歩らり」や県内外のイベントで販売している。
パンとマフィンはネット販売も実施中↓
www.shoku-no-nekko.co


その2

心のブレがなくなった

―    それで、もう”自分の道”は決まってるんですか?

浦辺・・・去年、「うちは米、つまり穀物の農家だ」ということに気づいたんです。
それで「米は父が作っているから、私はそれ以外の穀物をやろう」と。
米も麦も、刈り取り機や乾燥機など機械が同じだから家にあるものを使えますし。
そうやって、だんだん方向性が固まってきましたね。

―    お父さんが米なら、自分は小麦だと。

浦辺・・・小麦に限定せず、”米以外の穀物”です。あとは豆も育てていきたいです。


 

 

 

 

 



―    同時期に、食の工房「ネテ製穀」さんも立ちあげたんですよね。

浦辺・・・工房のほうが先で、去年の春に立ち上げました。名前の「ネテ」は、食の根っ子の「ネ」と、手作りの「テ」から取りました。それだけだと何をやってるかわかりにくいので、製菓や製パンをもじって「製穀」と後で付け足しました。

―    パンやお菓子作りは昔からされてたんですか?

浦辺・・・こちらに帰ってきてから。3年前ぐらいからですね。

―    きっかけは何かあったんですか?

浦辺・・・それが…とにかく昔から、うちはパンを食べない家だったんですよ。米農家なんで(笑)。姉がこっそりパン食べてると「米農家がパン食うな!」とよく父に怒られてましたね。今、父はそんなこと覚えてなくて、私のパンをガツガツ食べてくれてるんですけど(笑)。

―    どうして、そんなふうに変わっていったんですかねぇ :roll:

浦辺・・・昔からこのあたりにあるパン屋さんにも、ごくふつうのどこにでもある惣菜パンとか菓子パンとかしかなかったし、つい最近までそれしか知らなくて、「パンってそういうもんや」と思ってたんです。
だから、ある人に教えてもらって、東京の「ル・ヴァン」さん、金沢の「寺町大丸堂」さんのパンを食べてみたら、びっくりしてしまって! 最初は店名もどんな店とも知らず、もらって食べたんですが、「何も入ってないのに、めちゃおいしい!」と思って。それ以来、いろんなパンを食べるようになり、自分でも作るようになっていったんです。自分が食べたいパンはこの周辺では買えないですから、作るしかない(笑)。

―    そうやって、パン作りにどんどんハマっていって。穀物である小麦の面白さにも目覚めていったんですね。

浦辺・・・パンは、「小麦を育てよう」という思いに至るきっかけになりました。

―    浦辺さんが作るパンやマフィンに使う小麦には、かなりのこだわりを感じます。

浦辺・・・最初から「国産小麦しか使わない」とは決めてました。

―    ちゃんとした「ネテ製穀」のポリシーがあるんですね。

浦辺・・・はい。粉もそれ以外の素材もできるだけ国産のもの、旬のものを使おうと決めていますそれは、マクロビオティックに大きな影響を受けたからです。特に「地産地消の食生活が身体にも心にも一番いい」という考え方ですね。幼い頃から自分の家で収穫した野菜を食べて育ってきたので、スーパーで旬以外に売ってる野菜にはすごく違和感を感じてたし、「やはりそれが正しいんだな」とすごく納得しました。
※桜沢如一氏が日本の伝統食をベースに提唱した食養生法。玄米菜食、地産地消などの特徴があり、アメリカなど世界各地に実践者がいる。マドンナもそのひとり。

―    転勤生活で家を出てみて、当たり前だった食生活が実はとても贅沢なものだったと気づいた?

浦辺・・・すっごく、わかりました。「お米って買わんと、ないんだ!」とか。

―    え、そこからですか 8-O (笑)。
スーパーで買う米や野菜と、それまで食べてたものは違ってましたか?

浦辺・・・全然違います。スーパーの野菜は味がしないですよね。にんじんひとつとっても、本来の味がしないじゃないですか。うちのにんじんは味が濃すぎて、スティックで食べられないですよ。そういうことって、いったん家を出てみないと気づけなかったと思います。
今農業してるのも、回り回って「この道行け」と言われているような気がします。

―    ここに導かれたような?

浦辺・・・ええ。野菜にこだわっていた頃は、何か常にモヤモヤを感じていたんですが、「穀物をやっていこう」とピーンとひらめいた時、頭がすっきりしました。そこから全然ブレなくなりましたね。そのあたりから、突然どんどんいろんな方とつながっていけるようになったんです。今、ネテのパンを販売先になってる「歩らり」さんとの出合いもその頃でしたね。

七尾市一本杉通りにある雑貨店「歩らり」
かつて万年筆店だった昭和初期の建物をリノベーション。店内にはセンスのよい器、雑貨、アクセサリーが並んでいます。
(入口の上部の万年筆をかたどった彫刻、わかります?)

ネテさんのパン・マフィンの販売コーナーはレジ横にあり

 

―    ”穀物”農家という、一本芯の通ったポリシーができたからでしょうね。
浦辺さんには、何かすごく骨太なものを感じます。だからきっと、みんな応援したくなるんです :lol:

浦辺・・・うれしい! ありがとうございます。

―    工房では、今はパンと玄米酵母マフィンに絞ってますよね。今後の展開は?

浦辺・・・あとは、酵母の焼き菓子、たとえばスコーンなどもやっていきたいですね。パンの種類をどんどん増やしていくことは考えてないです。自分の中では”テーブルでいつも当たり前に食べるパン”を作り続けるのが目標です。


(つぎに続きます!)