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vol.8 浦辺千寿さん その3

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

浦辺千寿さんのプロフィール
1985
年、石川県七尾市に生まれる。
県立羽咋高校卒業後、和倉温泉の旅館「加賀屋」に入社し、
接待さんとして働く。
その後、レディスカジュアル会社「ハニーズ」に勤務。
2009
年に実家に戻り、家業の農業に従事する。
2011
年にパン・焼き菓子の工房「ネテ製穀」を開業。
七尾市の雑貨店「歩らり」や県内外のイベントで販売している。
パンとマフィンはネット販売も実施中↓
www.shoku-no-nekko.co


その3

エグ味を活かして

―    ハード系の食事パンは、浦辺さんがどうしても作りたかった”ネテ製穀の柱”ですよね。1番最初に完成したのはどれですか?

浦辺・・・クルミの田舎パンです。完成に至るまでは結構大変でしたね。
このパンには今、国産の鬼グルミを使ってるんですが、初めは洋グルミでした。その頃はまだ鬼グルミを知らなかったからです。私の中には“地元の素材”のほかに”野生の素材”を、さらに言えば”山の素材”を使いたい」という思いがあって、それを知る父がある時、鬼グルミの存在を教えてくれたんです。じゃあそれを使おう!と。

 

 

 

 

 

 

 

たっぷり入った鬼ぐるみ。 知人から野生のクルミを取り寄せている

 


 

 

 

 

 

―    和の素材への思い入れがあって、最初にこのパンが完成したんですね。

浦辺・・・というより、私がとにかくクルミのパンが食べたかったんですけどね(笑)。ほかのお店には、クルミとイチヂク、クルミとレーズンといったパンはよくあるんですが、クルミだけが入ったパンはあまり見当たらなくて。「私はクルミだけのパンが食べたいの!」と思って作っちゃいました。動機は食い気です(笑)。

―   ハハ、なるほど。で、実際に国産の鬼グルミで作ってみて、どうでした?

浦辺・・・すごく、エグかった(笑)。でもふと「そんなパンができたのは、自分が今までのパンの概念に縛られているだけなんじゃないかな」と思ったんです。
クルミだけを食べるとおいしいんだから、作り方次第だと。

―    私、この鬼グルミのパンを食べて、びっくりしたんです 8-O  鬼グルミは独特の風味があって難しい素材ですよね。それが、このパンにはその風味こそがぴったりと合ってるというか。個性として活かされてると感じたんです。鬼グルミだけを何度か食べたことはあって、苦みや渋みは知っていたんですが、鬼グルミ入りのパンを食べたのは初めてでした。このクルミのかなり強烈な個性を活かしつつ、しかもおいしいということに本当に驚きましたね。

浦辺・・・ありがとうございます。皮ごと入れているんで、風味はかなり豊かだと思います。
確かにこの風味を「どうパンとして成立させるか」が本当に大変でした。
結局はライ麦の配合の調整が決め手だったんですけどね。
最初このパンは国産小麦のユキチカラをメインにしようと思って、ライ麦を2%ぐらいしか使ってなかったんです。でも、その配合で焼くと鬼グルミのエグ味が勝ってしまって、小麦の香りや味が全然しなくなってしまった。そこで、ライ麦の配合を変えてみることを思いつきました。小麦と違ってライ麦は、エグ味とかのクセの強い素材とすごく合いますから。
ところが、ライ麦には難点もあって、多すぎると膨らまないし、酸味がすごく出てしまう…ちょうどよい配合を見つけるまで苦労しましたね。

―    最終的にどの配合に落ち着いたんですか?

浦辺・・・このパンには10%のライ麦を配合してます。

―    作り方はどうやって勉強したんですか?

浦辺・・・家庭用のパン作りの本や「ルヴァン」さんの本、焼き菓子で有名だった「がちまい家」さんの本や雑誌など、いろんな本を読みあさって参考にしました。

―    粉以外の素材も、能登の塩と北海道産の甜菜糖など、こだわってますね。

浦辺・・・白砂糖は絶対使わないと決めていました。きび糖を使わない理由は、沖縄産のものが多いから。北陸で暮らす人の身体には、南国の素材は負担がかかるのでは思ったんです。それなら、雪国で気候風土が似ている北海道の甜菜糖を使った方がいいんじゃないかと。

―    なるほど、考えてるなぁ :roll:  そして、酵母は玄米酵母を使ってますね。

浦辺・・・最初はレーズン酵母だったんです。でもどうせなら、酵母も自分らしいものにしたくて…。探していた時に、いろんな酵母を起こしている人の本で”玄米酵母”を見つけたんです。これは面白そう、とやってみたんですが、ぜんぜんうまくできませんでした。菌が酵母としてなかなか繁殖してくれなかったですね。さらにいろいろと試行錯誤を重ねて、2012年のお正月にやっと出来上がったんです。それからは、すぐ出来るようになりました。

―    玄米酵母作りは結構大変なんですね。

浦辺・・・水と甜菜糖で作るんですが、酵母が増えてくれるまでに時間がかかりました。

―    レーズン酵母とはどんな違いがあるんですか?

浦辺・・・レーズンは甘みがすごく残ります。古代小麦を使うと特によくわかりますね。
玄米酵母は、酵母のガツガツした感じが出なくなります。一度作ると、水と甜菜糖でかけ継ぎしていくことができ、すごく長持ちするんですよ。

―    風味的にはクセがなく、どんな素材にもなじみやすいという感じですか?

浦辺・・・そうですね、何にでも合います。

―    このクルミパンには、自家製ライサワーも使ってますね。やはりライ麦を入れるからですか?
※ライ麦と水から起こした酵母。発酵の過程で乳酸菌が発生し、この乳酸菌がライ麦生地を膨らませ、香りをよくしてくれる。

浦辺・・・これを入れるか入れないかで、すごく酸味が変わってきます。入れると酸味がよく出るんです。小麦とライ麦を合わせただけだとそれほど酸味は出ませんし、ライ麦が入ってることで膨らみが落ちてしまうんです。サワー種を足すことで膨らみを補ってくれますし、ほどよい酸味とコクが出ます。

―    なるほど~ :lol: このパンのおいしさの秘密がよくわかりました。


(つぎに続きます!)