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vol.8 浦辺千寿さん その5

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。

浦辺千寿さんのプロフィール
1985
年、石川県七尾市に生まれる。
県立羽咋高校卒業後、和倉温泉の旅館「加賀屋」に入社し、
接待さんとして働く。

その後、レディスカジュアル会社「ハニーズ」に勤務。
2009
年に実家に戻り、家業の農業に従事する。
2011
年にパン・焼き菓子の工房「ネテ製穀」を開業。
七尾市の雑貨店「歩らり」や県内外のイベントで販売している。
パンとマフィンはネット販売も実施中↓
www.shoku-no-nekko.co

 

その5

職場じゃなくて“伝える場”

―    これからの新商品の構想はあるんですか?

浦辺・・・能登の酒蔵「宗玄」さんの酒種を使った、ハードな食パンを考えています。いろいろ試行錯誤して、やっと形になってきました。酵母を元気な状態に保ちながら、しかも暴走させないように作るか、”酵母ちゃん”と話合いながらやっています。
※「甘酒の山食パン」として、すでに販売中

―    パン屋さんはみなさん”酵母ちゃん”が大好きですね。面白過ぎて、まるで取り憑かれているかのようです :lol:

浦辺・・・確かに取り憑かれます、これ(笑)。酵母好きなパン屋さんが集まってお話したら、きっと楽しいと思いますよ。

―    そうですね。いつか実現させたいです! 
ところで、浦辺さんの1日のスケジュールって、どうなってるんですか?

浦辺・・・パンを作らない日はガッツリ農作業。パンを作る日は、発酵などの仕込み時間に田畑に行っています。両方やり始めた昨年は要領がよくつかめなかったんですが、今年はだんだん慣れて時間の使い方も上手になってきたんじゃないかな。

―    そんなふうに「農業をしながらパン作り」というのは私が知る限り、とても新しいスタイルだと思うんですが。

浦辺・・・よく”二足のわらじ”と言われるんですが、私の中ではその2つはつながってるものなんです。農家さんがよく自分たちが作った農産物で、梅干しや漬けものを加工してるじゃないですか、あれと同じです。

―    でも、浦辺さんが扱ってる素材自体が、とても珍しいですよね。
スペルト小麦は使うだけじゃなくて、栽培まで始めちゃうなんて :roll:  
これまでに作ってる農家さん、聞いたことないです。
一般的な小麦を選ばず、あえてこの小麦を育てようと思ったのは?

浦辺・・・やっぱり原種好きだからですね。日本で育つかどうか、育ってもグルテンがどんな状態になるのかもわからないです。もしダメだったら、小麦のユキチカラではなく、ライ麦を育ててみようと思ってます。

―    スペルトがダメなら、ライ麦って、つくづく困難な道を行くチャレンジャーですね…(笑)。ところで、そのスペルトの種はどこで手に入れたんですか?

浦辺・・・これもネットで。欧米から種を輸入している会社から、小袋を大量購入しました。

―    浦辺さんみたく、小麦から育ててパン作りしてる工房って、他にあるんですかね。

浦辺・・・自家製小麦でパンを作っている滋賀県の「大地堂」さんがありますね。ほかにもきっとあるんでしょうけど、私はそこしか知らないです。

―    あっても本当に少ないでしょうね。でも、うまくいけば今年小麦が収獲できますし、自家製小麦で作ったパンが販売できるんじゃないですか?

浦辺・・・収穫できたとしたら、その小麦で今年の酵母はまかなえるんじゃないかなぁと思ってます。でも大丈夫かなぁ。「穂、出るのかぁ」と心配です。父は「大丈夫、はらんどるから必ず(穂が)出てくる」と言ってくれてるんですが。

―    大丈夫ですよ。ベテランの師匠がそう言ってくださるなら。収穫はいつ頃ですか?

浦辺・・・梅雨前ぐらいになりますね。

5月のインタビューの後、伺った浦辺さんの小麦畑

 

 

 

 

 

 

 




心配そうに眺める浦辺さんでしたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


大丈夫。お父さんの言葉通り、
ちゃんと穂の赤ちゃんが育っていました

 

 

 

 

 

―    そんなふうにいつも浦辺さんは挑戦し続けてますが、これからの展望はどう考えてますか?

浦辺・・・工房では”パンと焼き菓子”を柱としていくこと、穀物農家としては”豆”にも力を入れていきたいですね。

―    いいですね~ :-D  私も豆大好きです。豆は現在も栽培しているんですか?

浦辺・・・家で食べる分ぐらいは作っています。小豆と大豆を3種、後はそら豆、いんげんです。今年からは加工分も含めて増産していきたいですし、うずら豆も作りたいですね。

―    加工品というと?

浦辺・・・パンと一緒に食べる豆ジャムや、甜菜糖で煮る甘納豆ですかね。

―    豆ジャムってどんな味わいなんでしょうね。

浦辺・・・小豆にシナモンを入れてみたりして、豆ペーストみたいなものを考えています。

―    豆ペーストかぁ、とっても楽しみです。でも、そんなふうに作る穀物も増え、商品も増えるとなると、一人では大変になってきますね。

浦辺・・・農作業については、除草はひどくならない程度にやって、ほとんど”自然農”に近い形でやっていこうと思っています。

―    将来的に規模を大きくして、従業員も雇用して…とか思い描いてますか?

浦辺・・・それは絶対ないですね。それをやってしまうと楽しくないですし。
自分ができる範囲で、自分の手ですべてやりたいんです。
「地元のものを食べよう」、「身体も心もゆるく生きていけるから」という思いを、私が作るパンを食べてくださる人たちに少しでも伝えていけたらいいなという、ただそれだけです。
ネテ製穀は”職場“というより、そういうものを伝えていく場なんです。だから従業員の雇用はないですね。

 

(浦辺さんのインタビューはこれで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうごさいました)