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vol.9 内籐直樹さん その3

Oi-pan interview パン屋さんの「なんでパン?」をうかかがいます。


●内籐直樹さんのプロフィール
1961年、広島県出身。
カワイ楽器の調律師として金沢に赴任。
パン屋でのアルバイトをきっかけにパン職人になることを決意。
「ドンク」での修業を経て、
’92年に「アリスファームキッチン」を開業。
趣味はピアノ演奏。

 

その3

フランスで得たもの

―    アリスさんからは卒業生も何人か育っておられますよね。鶴来の「あさひ屋バーカリー」さん、御経塚の「ランコントル」さんとか。

内籐・・・そうですね。杜の里の「ディプシー」さんもです。

―    有名店ばかりですね。以前「ランコントル」さんを取材した時、店主の桶川さんは内籐さんを師匠として尊敬されてましたよ :-o お教えていただいたバゲットは自分の財産だと。

内籐・・・そういえば、彼がうちにいた頃は一緒に講習会などに行ったりして、よく勉強しましたねえ。

―    そんな内籐さん自身が、影響を受けたパン屋さんはありますか?

内籐・・・たくさんあります。東京だと、天然酵母で有名な「ルヴァン」さん。「ベッカライ ブロートハイム」さんでは、オーナーシェフの明石克彦さんにパン作りの精神を教えていただいたりもしました。神戸にもよく講習会に行きましたよ。フランスのオーブンやミキサーを取り扱う日仏商事の講習会で、「ビゴ」を代表するシェフの藤森さんや「イスズベーカリー」さんの技法を学んだり。フランスにも行きましたし…

パン屋さん対象の講習会にて。
中央は「ベッカライ ブロートハイム」の明石さん、右は高山の人気店「トランブルー」の店主、成瀬さん。
今から20数年前、パン職人の有志が集り、「ベーカリーフォーラム」という研究会を発足。さまざまな勉強会を通じて、”パン屋の理想形”が理論化されていった。

 

―    え、フランスにも!

内籐・・・フランスのパン学校に1ヶ月通いました。ルーアンというところの国立製菓製パン学校です。

―    す、すごい 8-O

 





「ルーアン国立製菓製パン学校」の釜と、その釜で焼いたパン


内籐・・・ルーアンとパリとはちょうど金沢から京都ぐらいの距離で、電車で3時間ぐらいで行けたんです。土日のお休みにはパリでパンの食べ歩きをしてました。美術や音楽も好きだから、美術館や教会とかも観光しながら。

―    贅沢な1ヶ月間でしたね。何年ぐらい前ですか?

内籐・・・10年ぐらい前です。いろいろ勉強になったなぁ。いや、勉強というより、本場の空気感を感じられたのがよかった。現地で食べるパン、ワインは日本とはやはり違うんですよ。



 

 





内籐さんは、パン研修の合間にパリの有名パン店の食べ歩きを満喫


―    その土地のものを現地で食べると、取り寄せたり、おみやげで食べるより、はるかにおいしいですよね :lol:

内籐・・・絶対そうです!

―    じゃ、技術的なことよりも…

内籐・・・技術はもう日本もかなりのレベルにきてしまってますからね。
文化的、精神的な背景、土壌を知ることができたほうが大きかった。

―    暮らしの中のパンのあり方にもふれられますからね。
パン屋さんはどんな店が印象に残りましたか?

内籐・・・「ポワラーヌ」や「エリック・カイザー」ですね。特に「エリック・カイザー」のパンは本当においしかった! ちょうどお店でエリック・カイザー氏にお話を伺うこともできて、ルヴァンリキッド種の作り方も聞けたんですよ。当時はまだ珍しかったので、日本に帰ってからルヴァンリキッド種を使ったパンをやってみようと思ってたら、もうじきエリック・カイザーが日本進出すると知って…これはショックでしたね(笑)。

―    そうそう、日本には、あんぱんで有名な「木村屋」がエリック・カイザーと共同で「メゾン・カイザー」として出店しましたよね。パリの「エリック・カイザー」はどんなパンがおいしかったですか?

内籐・・・ブリオッシュやバゲットアランシェンヌですね。「エリック・カイザー」はほんとに酵母を上手に使うんです。影響を受けて、僕もフランスから帰ってきて、イーストとルヴァン種を併用して使うパンを作り始めました。上手に併用すると実においしいパンができます。
僕はそれまでイーストならイーストだけ、天然酵母なら天然酵母だけじゃなきゃダメという、妙な酵母のこだわりがあったんですが、フランスに行ってからなくなってしまいましたね。それは粉についてもです。

―    粉も?

内籐・・・「国産小麦で天然酵母で作るパンが一番」という風潮が一時期あったじゃないですか。そうじゃなくて、それぞれの酵母や粉のいいところを活かす”感性”が大事なんじゃないかなと気づきました。エリック・カイザーがそのお手本を見せてくれたんです。僕もそこを目指したいなと、今もいろいろ実験中なんですけどね。

 

(つぎに続きます!)